2026年7月28日に発売されたBYD「RACCO(ラッコ)」(214万5000〜249万7000円*)。BYD初の軽EVで、両側スライドドアを備えた使い勝手のいいボディに、一充電走行距離210kmまたは320kmの2種類のバッテリー仕様を設定しています。今回は最上級グレードの「300 Premium」を3泊4日でじっくり試乗。乗るほどに感じたという“軽に乗っている気がしない”上質感と、欧州コンパクトカーを思わせる骨太な走りとは? 自動車評論家の島﨑七生人さんの試乗レポートをお届けします。
*国のCEV補助金として15万円が交付されます。申請総額が予算額の上限に達し次第、受付終了となります。2026年10月時点の情報です。
まるでアルファ156 GTAのロッソ・ヌボーラ!?

プレス向けに開催された試乗会の“ひと枠”ではとても物足りず、試乗車を借り出して3泊4日ほど(今後、年末に向けて試乗車は何かと出番が増えるだろうから、日数は少し遠慮しつつも、予定が混み合わないうちに貸し出しの申し込みをした)ラッコのある暮らしを送ってみた。
すると乗れば乗るほど実感したのが“軽に乗っている気がしない”という思いだった。借り出した個体はBYD RACCO 300 Premium(249万7000円)というモデル。3グレード用意されるラッコのラインアップでは同じリン酸鉄リチウムイオンバッテリー(LFP)のスペックが高いほうで、かつ装備レベルももっとも充実した上級仕様となるモデルだった。カタログの諸元表によれば、駆動用バッテリーはベースグレード200の総電力量22.40kWhに対して300の2グレードは35.84kWhと大きく、一充電走行距離(WLTC)の数字は320kmと、200の(210km)を凌ぐ。モーターについては300と200は同一スペックだ。

試乗に借り出したラッコのボディカラーはルビーレッド。赤系という色相だけでいえば日本の軽スーパーハイトワゴンにもなくはない。が、ラッコのそれは明度、彩度ともに段違いの高さで、光輝材が混ぜてあるらしく、光の当たり具合でハイライト部分が黄色みがかって見えるなど表情も変化させる。「まるでかつてのアルファ156 GTAにあったロッソ・ヌボーラみたいじゃないか!」と、元・アルフィスタの筆者など密かにニンマリとした……という話はさておき、アークティックブルー、チーズイエローなどのペールトーンもサッパリとしていていいが、実用車ながらこんな鮮やかな色を“指名買い”してみるのも、日々、気持ちが鼓舞されていいかも知れない、とも思った。
圧倒的にサッパリしている外観デザイン

またノイズのない内・外観デザインそのものもラッコの魅力だ。とくにキャラクター線が極力廃された外観は、スッキリとしていて気持ちがいい。リアエンドの、大きくワンモーションを描きつつごく僅かだけ上方をすぼませつつ前傾させたシルエットも、背が高くとも安定感を出すのに貢献している。クルマに関心があるか広瀬アリスのファンならともかく、そうでない人には確かに姿形をパッと見て他車(日本車)との識別は難しいかもしれない。が、表情が饒舌だったら国産勢、圧倒的にサッパリしていたらラッコと覚えておけばいいかもしれない。なおラジオのアンテナはリアガラス内蔵タイプだから、洗車機で畳む手間はない。
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上質であるだけでなく“肉厚”な室内空間

その一方で室内空間は、上質であるだけでなく“肉厚”な印象をもつ。もちろん実際に内装を分解して樹脂の厚みを確認したわけではないが、インパネを始めとしてガッシリと堅牢そうなデザイン、触ると伝わる造りのよさが、これも軽のレベルを超えていると実感させてくれる。




シートもいかにも高密度なクッションが使われており、座った時の身体をシッカリと受け止めてくれる感触は軽ではなく小型車の水準といったところ。物理スイッチの操作感も上質だ。


それと後席用の折り畳みテーブルが、日本の軽なら1枚モノで仕上げるところ、下から覗くと表/裏の2枚構成として22本ものビスを使って表裏を組み付けている(頑丈なステーを止めている着座状態から目に入るビスのアタマは、体裁のいい艶アリのビスで区別している)。凝った造りは恐れいりましたという感じだ。
至れり尽くせりの装備

トップグレードの300 Premiumの場合、装備レベルも高く、運転席6Wayパワーシートを始めステアリングヒーター、保温機能付きのホットカップホルダーなど、至れり尽くせり。それとこれぞ親切設計といえるのがハンズフリーの電動スライドドア。

というのも、ドアを開ける際、路面に映る丸いスポットライトが見えるから、そこに影踏みの要領でススッと足先を差し出せばいとも簡単にドアが開いてくれる。よくある“片足を浮かせて宙でスワイプする方式”ではないのがよく、両足を地につけたまま簡単、確実な操作が可能。近ごろ片足立ちに自信がなくなってきた世代のユーザー(=筆者)でも自信をもって操作ができたのだった。
欧州コンパクトカーのような乗り味


そして走りの“骨太感”もラッコの大きな魅力だ。平たく言うと軽自動車らしからぬ、まるで欧州コンパクトカーのようなドッシリとした足回り、乗り味といえばいいか。何よりもステアリングの重さ、手応えをしっかり残した操舵感は心強い(ステアリングとブレーキのタッチはコンフォートとスポーツの選択が可能)。バッテリーを利用した低重心でフラットな乗り味は、低い床の上を乗車位置とした我が家の飼い犬のシュンにも好印象の様子だった。


乗り降りのしやすさ、シートの上の居心地のよさなどで、シュンはいつになくこのラッコというクルマに馴染んでいた。走行中に車内に伝わるタイヤノイズも低く、もとよりモーター駆動だからメカ音もごく小さく、当然ながら静粛性の高さはちょっとした小型車を軽く凌ぐ。
普段使いなら充電状態を気にするようなことはない

では充電に関してはどうか? 今回の試乗は当初の予定より試乗車を前倒しで返却する必要が生じ、距離にして100kmほどと短い試乗となった。そんな中で主として日常的な使い心地を試したのだが、一充電走行距離320kmの数字を念頭に数日をともにしたラッコ300 Premiumは、少なくとも普段使いではSOC(State of Charge=充電状態)を気にすることなく使えた。

ザックリとした肌感覚的には、ほぼ同様のパターンで試乗経験のある日産サクラ(一充電走行距離=180km)よりやや上、ホンダN-ONE e:(同=295km)とはほぼ同等といったところか。試乗中に1度、EVの試乗時にいつも利用する自宅近くのスポットで急速充電(90kW)を実行したが、79%からのスタートだったため、30分とかからず満充電に。ディスプレイ内の表示は10.8kWh/100kmの数字が示されていた。実際のオーナーであれば自宅での普通充電をベースにすることになるだろうが、普段使いで急速充電を利用しながら乗るスタイルでもストレスは感じない。その上でV2H、V2Lにも対応する安心感、利便性も今どき見逃せない。
(写真:島﨑七生人)
※記事の内容は2026年10月時点の情報で制作しています。
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