ファミリーカーの定番になっているミニバン。なかでもミディアムサイズにはトヨタ、ホンダ、日産の人気車種が揃い、激しい販売競争が繰り広げられています。2026年7月の新車販売台数ランキングではトヨタ「ヴォクシー」の6471台を筆頭に、ホンダ「ステップワゴン」が6453台、トヨタ「ノア」が6219台、そして日産「セレナ」が6140台と、その差はごくわずか。そんな国産ミディアムサイズミニバンで、最も販売台数が多い「ヴォクシー」の2026年4月一部改良モデルに自動車評論家の萩原文博さんが試乗しました。一部改良のポイントとともにライバル車との比較なども紹介します。
ついにノアを上回ったヴォクシーの売れ行き

2022年1月登場時のヴォクシー

2026年4月一部改良後のヴォクシー

2026年4月一部改良後のノア
2022年1月に販売開始した4代目となる現行型トヨタ「ヴォクシー」と兄弟車の「ノア」は、みんなでやりたいことを詰め込んで出かけたくなる、「より快適に」「より便利に」「より安心な」ミニバンとして誕生しました。クルマの骨格となるプラットフォームには、トヨタのクルマ構造改革であるTNGAプラットフォーム(GA-C)を採用。初代モデルから受け継ぐ、優れたパッケージと使い勝手の良さを一層深化させています。このプラットフォームの採用によってボディサイズが全長4,695mm×全幅1,730mm×全高1,895mm(4WD車は1,925mm)と、ついに全車3ナンバーサイズとなりました。

2022年1月登場時のヴォクシー

2026年4月一部改良後のヴォクシー

2026年4月一部改良後のノア
登場時のグレード構成は、ノアには従来どおり標準車とエアロモデルの2種類を設定する一方で、ヴォクシーはエアロモデルのみが設定されています。モデルチェンジを機にノアに一本化されるのではないかという見立てもありましたが、スポーティなイメージの強いヴォクシーには男性を中心とした根強い支持があることにトヨタも気づいていたのでしょう。標準車の設定がないにも関わらず、ヴォクシーはモデルチェンジ直後から販売台数でノアに僅差で迫る状況が続き、ついに2025年度(2025年4月〜2026年3月)の年間販売台数ではヴォクシーがノアを上回りました。
全車3ナンバーとなった現行型ヴォクシー

2022年1月登場時の4代目ヴォクシー

2026年4月一部改良後の4代目ヴォクシー
まず、2022年1月の登場時の情報をおさらいしましょう。現行ヴォクシーの外観デザインは「先鋭・独創」をキーワードに、薄型アッパー部と分厚くスクエアなロア部の組み合わせによってコントラストの強い立体構成と個性的なグラフィックでノアとの差別化を行いました。怪しく光る特徴的なフロント/リアランプによって、夜でもその存在感を強調しています。

2026年4月一部改良後のインパネ

2026年4月一部改良後のフロントウィンドウ側ルーフの操作スイッチ類

2026年4月一部改良後の2列目用のエアコン操作スイッチ類
インテリアは、水平基調で低くワイドに構えたインストルメントパネル、ドアトリムに加え、アシストグリップやエアコン吹き出し口など機能的に配列したルーフ周りによって、見晴らしの良い開放的空間を実現しました。
▼毎月定額ラクラク支払い▼
カーリースカルモくんで「ヴォクシー」の月額料金をチェック!
登場時はガソリンとハイブリッドの2本だて

2022年1月登場時のハイブリッド車のエンジンルーム

2026年4月一部改良後のハイブリッド車のエンジンルーム。見た目はほぼ同じ
当初、搭載していたパワートレインは2種類。最高出力170ps、最大トルク202Nmを発生する高い熱効率を実現した2L直列4気筒ダイナミックフォースエンジン+CVT。このCVTはマニュアル感覚のシフトチェンジが楽しめる10速シーケンシャルシフトマチックを設定していました。

2026年4月一部改良後のディスプレイ
もう一つが1.8Lエンジン+モーターのハイブリッドシステム。こちらはモーター・バッテリーの高出力化とシステムの高効率化した最新世代のハイブリッドシステムとなっています。駆動方式はガソリン車に加えてハイブリッド車にも待望の4WDを設定。燃費性能は、ガソリン車が14.3~15.1km/L。ハイブリッド車は22.0~23.4km/Lとクラストップレベルです。
先代の弱点を完全に埋めた安全性能

2026年4月一部改良後のステアリング右側スイッチ

運転支援システムは、機能向上した予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス」を全車に標準装備。トヨタ車初搭載だった「プロアクティブドライビングアシスト」をはじめ、高度運転支援技術「トヨタチームメイト」には「アドバンストドライブ(渋滞時支援)」を採用。さらに、安心・便利なコネクティッドサービス、T-Connectオプションサービスも提供するなど、当時の最新技術を惜しげもなく投入。先代モデルの弱点と言われていた運転支援機能を一気にクラストップへと引き上げました。
▼毎月定額ラクラク支払い▼
カーリースカルモくんで「ヴォクシー」の月額料金をチェック!
ミニバンとしての基本性能が大幅に上がった点こそ評価できる

2022年1月登場時の運転席

2026年4月一部改良後の運転席

2022年1月登場時の2列目シート

2026年4月一部改良後の2列目シート

2026年4月一部改良後の2列目シート(オットマン使用時)

2026年4月一部改良後の2列目シート(前後スライド量)

2022年1月登場時の3列目シート

2026年4月一部改良後の3列目シート
ミニバンとしての基本性能も磨き上げ、7人乗り仕様車のセカンドシートには、キャプテンシートを採用。クラス初となるオットマン機構とシートヒーターに加え、折りたたみ式大型サイドテーブルなどを装備しました。8人乗り仕様車のセカンドシートには、3人掛けベンチシートタイプの6:4分割チップアップシートを採用しています。



ユニバーサルステップは3万円台という安さ
パワースライドドア装着車に「ユニバーサルステップ」(助手席側)を設定。パワースライドドア開閉と合わせて“からくり”を使って機械的にドア下部からステップを展開・格納。ステップ高を200mmと低くすることで、子供から高齢者まで家族みんなに優しい乗降性を提供しています。

ミニバン特有の大きなバックドア対策としてボディサイド後部に設けられた操作スイッチ
この“からくり”ステップは3万円台と価格も安く、新型にかけるトヨタの意気込みを感じさせました。もう一つ、バックドア開閉時、任意の角度で保持できる「フリーストップバックドア」を世界初採用。バックドアを押すことで、こちらも“からくり”を使って任意の角度で停止可能とし使い勝手を向上しています。さらにバックドアがオート機能付きの仕様ではボデイサイド側に操作スイッチを設置し、狭いスペースでの開閉を安全に行えるようになりました。また、3列目シートも簡単に片手で格納できる上に張り出しも削減する工夫が盛り込まれています。

2026年4月一部改良後のラゲッジ

2026年4月一部改良後のラゲッジ(3列目格納時)

2026年4月一部改良後のラゲッジ(3列目格納・2列目スライドのラゲッジ最大モード時)
これまでコスト優先が目立っていたノア/ヴォクシーらしからぬ(?)、これらの“気配り装備”に「もっといいクルマを!」というトヨタの姿勢の変化を感じたものです。
2026年4月の一部改良でハイブリッドのみに

2026年4月一部改良後の現行型ヴォクシー

販売開始から4年が経過し、2026年4月にヴォクシーは一部改良を行いました。大きなニュースはパワートレインの変化です。2Lガソリン車が廃止され、ハイブリッド車に集約されました。走りに関しては他にショックアブソーバーの減衰力を最適化することで乗り心地の向上を図り、ノイズの侵入経路に防音材を最適配置することで車内の静粛性を向上させています。
▼毎月定額ラクラク支払い▼
カーリースカルモくんで「ヴォクシー」の月額料金をチェック!
さらに精悍さを増した外観デザイン

2022年1月登場時の現行型ヴォクシー

2026年4月一部改良後の現行型ヴォクシー
外観デザインは、フロントまわりの意匠を変更し、ボディとの一体感を演出しています。目元を強調するスタイリッシュなデザインとなり、全車にリフレクタ式LEDヘッドランプ(マニュアルレベリング機能付)+LEDターンランプ+LEDクリアランスランプを標準装備しています。

2022年1月登場時の現行型ヴォクシー

2026年4月一部改良後の現行型ヴォクシー
さらにフロントグリルの本体部分をブラック加飾に変更し、新色のニュートラルブラックではグリルガーニッシュをブラック加飾に変更しています。そして17インチアルミホイールを切削光輝+ブラック塗装+ダーククリアに変更しました。ボディカラーには新色のニュートラルブラックとアーバンロックが追加されています。
質感が向上したインテリア、その代わりに価格は……


インテリアでは、全グレードでシフトノブ、ウィンドウスイッチ周りをピアノブラック塗装に変更したのをはじめ、最上級グレードS-Zではメーターフードを表皮巻き・ステッチ加工としています。インストルメントパネルやドアトリムはステッチ加工の追加、そして一部をスエード調表皮に変更、シート表皮の意匠変更などと合わせて全体的な質感を向上させています。


S-Zは12.3インチとなるメーターの液晶部
メーターの液晶部分はS-Zは12.3インチ、S-Gは7インチと大型化し視認性をアップしたのをはじめ、ワンタッチスイッチ付きデュアルパワースライドドアの標準装備グレードの拡大なども実施されました。他にも前後方ドライブレコーダーを設定(S-Zは標準装備、S-Gはメーカーオプション)、4WD車のドライブモードセレクトに「SNOW EXTRAモード」を追加設定するなど走りの質感を向上させると同時に快適性を向上させています。

一部改良後のヴォクシーの車両本体価格は、S-G 2WDの375万1000円〜S-Z 4WDの438万200円。ガソリン車が廃止されたことで最低価格が50万円ほど、またハイブリッド車も8~16万円ほどの値上げとなっています。
装備レベルを揃えればライバルとの価格差は少ない

今回試乗したのは、車両本体価格412万7200円のヴォクシー「S-Z」の 2WDモデル。オプション装備は、ハンズフリーデュアルパワースライドドアやパワーバックドアなどがセットになった「快適便利パッケージ(High)」14万8500円をはじめ、アドバンストドライブ、緊急時操舵支援+フロントクロストラフィックアラート+レーンチェンジアシスト、ドライバーモニターカメラ、カラーヘッドアップディスプレイがセットで12万2100円、ユニバーサルステップ(助手席側)3万3000円など66万8250円分が装着され合計479万5450円となかなかのお値段。



ステップワゴンは唯一三列目シートを床下に収納できる点が差別化ポイント
ライバルのハイブリッドモデルと価格を比較すると日産セレナe-POWERハイウェイスターV 2WDが377万5200円。ホンダスパーダプレミアムライン2WDは387万3100円とヴォクシーが割高に見えますが、これは装備差があるためで、装備内容を揃えると、それほど差はなくなります。
▼毎月定額ラクラク支払い▼
カーリースカルモくんで「ステップワゴン」の月額料金をチェック!
相変わらずの燃費番長、電動感はやや薄い

今回の一部改良で、ヴォクシーの燃費性能は21.8〜23.6km/Lまで向上しています。試乗時はエアコンに負荷のかかる真夏、しかも街乗りが中心の100km程度だったこともあり燃費は15.1km/Lに留まりましたが、トヨタ製ハイブリッドの燃費の良さは相変わらずクラスナンバーワンと言っていいでしょう。


セレナに搭載されたe-POWERはエンジンの存在感が薄い
ただ、車重の重たいミニバンゆえ、エンジンが掛かる頻度は最近のトヨタのハイブリッドモデルの中では比較的多めです。この部分に限ると日産のe-POWERやホンダのe:HEVといった“モーター主役型”ハイブリッドの方が電動感は強く、未来的な印象を受ける人が多いのではないでしょうか。
▼毎月定額ラクラク支払い▼
カーリースカルモくんで「セレナ」の月額料金をチェック!
足回りの良さは現行モデルの美点

足回りは相変わらずしなやかな動きを実現していて、カーブを曲がる時のロール量だけでなく、発進やブレーキ字の前後の揺れも抑えることができ乗員全員に安心・安全を提供してくれます。一部改良前から変わらない現行モデルの優れた点です。
一方で、一部改良後で最も変わったのは静粛性です。会話明瞭度が向上しただけでなく、エンジンノイズやロードノイズの遮断など静粛性はひとクラス上の実力を誇り、これまでより隙のない仕上がりとなっています。
何よりもエアロ系ミニバンの王道スタイル

2026年4月一部改良後のヴォクシー
一部改良されたヴォクシーは、燃費の良さ、安定感の高い走行性能、静粛性という走行性能に関わる多くの部分でライバルをリードしていると感じました。加えて現行モデルの良さである気の利いた装備の数々、そして何よりライバルよりも押し出しの強い外観デザインもオーナーを満足させるポイントでしょう。

日産セレナハイウェイスター

ホンダステップワゴンスパーダ
結局、このクラスでエアロ系ミニバンの王道スタイルを今も貫いているのはヴォクシーです。セレナハイウェイスターもステップワゴンスパーダも少々上品で都会的になり過ぎました。ノアも今回の一部改良を機に標準車は廃止されエアログレードのみとなりヴォクシーに近づきました。

先代モデルは操縦安定性や先進運転支援などの面で弱点を抱えていましたが、現行型ヴォクシーは“先進的な電動感”を除いた全てを克服した感があります。長く受注停止が続いていたヴォクシーですが、現在はオーダーを受け付けているので、気になる人は即アクションしたほうがいいでしょう。
(写真:萩原文博)
※記事の内容は2026年8月時点の情報で制作しています。
▼ 毎月定額ラクラク支払い ▼