2026年6月17日、日産「キックス」が6年振りにフルモデルチェンジを行い、新型へとスイッチしました。国内の新車販売台数ランキングで多くの車種が上位にランクインするなど人気を誇るSUV。そのなかでも特に激しい販売競争が繰り広げられている国産コンパクトSUVマーケットに投入された新型キックス。その実力はカローラクロスやヴェゼルなど実力者揃いのライバルたちを凌いだのでしょうか。自動車評論家の萩原文博さんの試乗レポートです。
斬新な内外装デザイン、拡大されたボディサイズ

一回り大きくなった新型キックス

初代キックスは比べるとコンパクトに見える
フルモデルチェンジを行い2代目(コンパクトSUVモデルとして)へと進化した日産キックスは、大幅に燃費性能を向上させた第3世代の「e-POWER」を搭載、さらに日産の誇る電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」も採用し、日常からレジャーまで幅広いシーンで活躍するコンパクトSUVへと進化しています。

斬新さが光る新型キックス

オーソドックスな初代キックス
新型キックスの外観デザインは、アメリカンフットボールのヘルメットをモチーフとしたフロントフェイスに、特徴的なシグニチャーランプがポイントとなる水平基調でワイドなフロントグリルを採用しています。リアも独特なロの字型の黒いグラフィックと車幅いっぱいに配置したテールランプにより、SUVらしい存在感を強調しています。
ボディサイズは全長4365mm×全幅1800mm×全高1615mm(4WD車は1610mm)、そしてホイールベースは2655mmとなっています。初代モデルと全高は同じですが、全長は75mm、全幅は40mm、そしてホイールベースは35mm延長されており、リアシートの居住空間やラゲッジスペースが大幅に改善されています。

先進性と上質さを獲得した新型キックスのインパネ

今となってはやや古さを感じる初代キックスのインパネ
新型キックスのインテリアは、モダンで開放的な居心地の良い空間を目指してデザインされています。インストルメントパネル、センターコンソール、ドアトリムには合皮やファブリック素材で仕立てたソフトマテリアルを採用し、上質さと触れたときの心地良さを追求しています。
新世代「e-POWER」と4輪制御技術「e-4ORCE」を搭載

新型キックスに搭載されているパワートレインは、最高出力98ps、最大トルク115Nmを発生する1.4L直列3気筒DOHCエンジンで発電を行い、モーターを駆動させて走行するシリーズハイブリッドの「e-POWER」を搭載。モーター、発電機、インバーター、減速機、増速機の5つの主要構成部品を一体化した5-in-1の第3世代e-POWERを日本市場で初採用。これまでより小型・軽量化とともに高剛性化を実現すると同時に、静粛性や燃費性能を向上させたのが特徴です。

駆動方式は、2WD(FF)と電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」を全グレードで選ぶことができます。2WD車はフロントに最高出力143ps、最大トルク315Nmを発生するモーターを搭載しています。e-4ORCE搭載車はリアに最高出力68ps、最大トルク140Nmを発生するモーターを搭載し、トルクを向上させたモーターとブレーキを統合制御することでコーナリングでの気持ちの良い走りと快適な乗り心地を両立しています。

さらに、高剛性ボディと新設計のサスペンションにより、コーナリング時の安定した走りと路面の段差における揺れを抑えた快適な乗り心地を両立しています。そしてe-4ORCE搭載車は、キックスとして初採用となるSNOWモードをドライブモードに設定し、滑りやすい雪道をはじめとするさまざまなシーンに応じた走りを提供してくれます。注目の燃費性能は、WLTCモードで20.1km/L〜25.7km/Lを実現しました。
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プロパイロット全車標準装備に加えて多彩な運転支援も

新型キックスの安全装備は、360°セーフティアシストに基づき、プロパイロットを全車標準装備しているのに加えて、新たにフロントワイドビュー、インビジブルフードビュー、3Dビュー機能が搭載されたインテリジェントアラウンドビューモニターを採用しています。


また、万が一の際に危機回避を行うインテリジェントエマージェンシーブレーキは、認識性能の向上により、交差点での歩行者や対向車、交差車両の検知性能を高めることでドライバーの負担を軽減。さらに、インテリジェントBSI(後側方衝突防止支援システム)&BSW(後側方車両検知警報)を全車標準装備とするなど、非常に高い安全性能を誇っています。
新型キックスの車両本体価格はエントリーグレードのXシンプルパッケージ2WDの299万700円〜最上級グレードのG e-4ORCEの424万8200円と幅広くなっています。
合計70万円相当のオプション装備で最上級グレード並み価格の試乗車

今回試乗したのは、車両本体価格359万9200円のX e-4ORCEです。しかし試乗車にはさまざまなオプションが付いていました。メーカーオプションとして、7万7000円のピュアホワイトパーツ/スーパーブラック2トーンのボディカラーをはじめ、6万6000円の100V AC電源(1500W・ラゲッジ1個)、5万5000円のLEDフォグランプ+クリアビューパッケージ、35万7500円のインテリジェントルームミラー+統合型インタフェイスディスプレイ+ニッサンコネクトインフォテインメントシステム(シンプル)と運転支援機能がセットになったパッケージオプション、そして6万500円のインテリジェントキー+リモコンオートバックドア+バックドアオートクロージャーを装着しています。


さらにディーラーオプションの1万3640円のウィンドウ撥水12カ月フロントウィンドウ・フロントドアガラス撥水処理、3万6762年のETC2.0車載器、3万1900円の3Dフロアマットも付いていて、合計429万7502円という仕様。最上級グレードのG e-4ORCEとほとんど価格差がなくなります。
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先進性と上質感を両立した内外装


新型キックスは斬新な外観デザインが目を惹きます。街中で走る姿を見る機会も増えましたが、その存在感はなかなかなもの。そして乗り込んでみると初代キックスよりボディサイズが大きくなったことで、存在感がアップしただけでなく、室内空間、特にリアシートの居住性が大幅アップしています。





運転席に座ってみると開放感のある視界とともにフロントウィンドウの下部にボディの両端が見えるので、ボディサイズが把握しやすいと感じます。インテリアは上級モデルのエクストレイルなどと同じパーツを採用していて先進性をアピール。



インストルメントパネルやドアトリムにソフト素材を使用することで、上質さの演出と触感の良さを両立しています。国産コンパクトSUVの中ではかなり上質感を表現できているインテリアと言えるでしょう。
従来モデルと比べると実力差は明白


第3世代へと進化したe-POWERですが、従来モデルと比べると実力差は明白です。エンジン排気量は200ccアップしただけですが、エンジンが掛かった時の振動や音の発生はかなりレベルが違います。
今回は街乗り、高速走行、ワインディングという約200kmを走行しました。街乗りや高速道路の巡航ではエンジンがかかっていることは全くわからないレベルにまで騒音と振動が抑えられています。もちろん、モーター駆動による走りはスムーズそのもの。高速道路の追い越しも非常にスムーズに行えます。
エンジンの存在がわかったのはワインディングを走行した際のこと。バッテリーを使用する上り坂で、バッテリーの残量が少なくなるとブロンという音とともにエンジンが掛かっていることがわかります。その際でも振動が抑えられているうえ、エンジン音もノイズには感じないレベルに抑えられています。
乗り心地の良さはクラストップ、燃費はまずまずのレベル

そして新型キックスの乗り心地の良さはクラストップレベルと言えます。路面の荒れた部分を走行してもタイヤとサスペンションでしっかりと吸収し、乗員には伝わりづらいです。都内に多い繋ぎ目でも衝撃をしっかりとサスペンションが仕事をしてくれるので、安定感の高いフラットな乗り心地を実現しています。

今回はe-4ORCE搭載車でしたが、ワインディングではこのe-4ORCEの効果が大きいことがわかります。カーブに近づき、ステアリング操作するとスピードやカーブの半径の大きさに合わせて、e-4ORCEが外側の2輪、内側の2輪、そして4輪全ての駆動力を最適化してくれます。その結果、クルマは前後や左右に揺れることなくカーブを走り抜けることができ、同乗者には安心感を提供してくれます。乗員の負担を軽減するゼログラビティシートをフロントだけでなく、リアの左右にも採用することで快適性も高めています。
17インチタイヤを装着したX e-4ORCEに約200km試乗し、燃費性能は1リッター当たり16.2km。高速道路では20km/Lに手が届きそうでした。
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人気のヴェゼルに勝るとも劣らない

ハイブリッド車であること、そしてボディサイズと価格帯でキックスのライバルを選ぶと、トヨタ「カローラクロス」とホンダ「ヴェセル」が挙げられます。残念ながらこのカテゴリーのトップセラーモデルであるカローラクロスは現在受注停止中なので、ヴェゼルが今いまのライバルと言えるでしょう。

内外装のセンスの良さと走りの良さでクラスを引っ張るヴェゼル
スタイリングの良さと走りの良さで人気のヴェゼルに対して、新型キックスも斬新で個性的な内外装と第三世代e-POWER、そしてクラス随一の乗り心地の良さで互角の実力を持っていると感じました。
新車価格は、キックスが299万9700円〜424万8200円に対して、ヴェゼルハイブリッドは299万8600円〜396万8800円と見事にクロスオーバーしています。燃費性能はWLTCモードでキックスが20.1km/L〜25.7km/L。対してヴェセルは21.3〜26.0km/Lとややヴェセルがリードしています。
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今後に期待できる出来の良さ

もし、キックスに死角があるとしたら、都会派SUVの割には全高が高いという点でしょうか。ヴェセルには2025年10月に追加された新グレードのe:HEV RSがあります。専用のローダウンサスペンションを採用し、高い車両安定性を実現しているだけでなく、全高を1545mmと下げたことで都市部などに多い立体駐車場に対応していることです。しかも2WD車だけでなく、4WD車も対応しているのは注目のポイントです。

立体駐車場に入る全高も魅力のヴェゼルRS
コンパクトSUVは都市部のユーザーも多いので、この立体駐車場に対応した全高のヴェゼルRSはキックスに対して大きなアドバンテージと言えるでしょう。ただ、キックスにもいずれNISMO仕様などが追加される可能性もあります。基本ポテンシャルの高いキックスだけに、今後のバリエーション展開にも期待しましょう。
(写真:萩原文博)
※記事の内容は2026年8月時点の情報で制作しています。
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