2026年5月22日に発売されたホンダ「Super-ONE」(339万200円)。N-ONE e:をベースに、ワイドボディや高出力モーター、仮想有段シフトなどを採用したコンパクトBEVです。シティ・ターボII“ブルドッグ”を思わせる刺激的なスタイルが印象的なSuper-ONEの走りと実用性はいかに? 自動車評論家の島﨑七生人さんの試乗レポートをお届けします。
*国のCEV補助金として130万円が交付されます(2026年4月1日以降の新車登録分)。申請総額が予算額の上限に達し次第、受付終了となります。2026年7月時点の情報です。
タダモノじゃなさをアピールしてくるスタンス

ベース車のN-ONE e:とSuper-ONEの実車が並んでいるところで見較べると、軽自動車かそうではないかの違いはあるにせよ、趣というか、発するオーラがずいぶん違う。N-ONE e:はBEVらしくクールでプレーンな印象。対してSuper-ONEは、スタイルはN-ONE e:のそれを踏襲してクールさはベースとしつつも、左右と前後に張り出させたブリスターフェンダー&バンパーの存在感が際立つ。とはいえよく観察すれば、たとえばブリスターフェンダーは上向きの面を優しく斜めに撫でられた形状にしてあったりと、元のデザインに周到に馴染ませたのであろうことが見てとれる。


もちろんN-ONE e:に対してトレッドで+40mm、全幅では100mm拡幅したボディと185/55R15 82Vタイヤが織りなすスタンスは、Super-ONEのタダモノじゃなさをアピールしてくる。といってもひと頃のホンダの高性能車に見られたガンダムチックの仰々しさはまったくなく、試乗したのは2泊3日の限られた時間だったが、一緒に過ごすほどにコチラの好感度も上がっていったのだった。
幅以外は“ブルドッグ”よりも大きい

直接インタビューした訳ではなくあくまで伝聞ながら、言われているように“ブルドッグ”の愛称で呼ばれたあのシティ・ターボIIが元ネタと言わないまでもイメージしていてのことだったそう。当時のカタログを見返すと、ブリスターフェンダーの作り方など通じるものがある。


参考までに、ボディサイズはSuper-ONEとシティ・ターボIIとでは、時代の違いがあるものの全幅こそ1625mmのシティ・ターボIIが幅広だが、オーバーオールはすべてSuper-ONEが上回っていて、ホイールベースは300mmも長い。
▼毎月定額ラクラク支払い▼
カーリースカルモくんで「ホンダ車」の月額料金をチェック!
とくに感心した乗り心地のよさ

さてそんなSuper-ONEに試乗して、素直に実感できたのは「なんて馴染みやすく面白いコンパクトカーなのだろう」ということだった。試乗車を受け取った当初こそ、イメージカラーの(その名も!)ブーストバイオレット・パール&ブラックがいささか目と内心に眩かったが、乗りはじめてほどなく乗る前に抱いていたすべての雑念が忘れられ、今風に言うと“没入感”に浸っている自分がいた……というべきか。

その中でとくに感心したのが乗り心地のよさ。クルマが走り出した瞬間から、アグレッシブでもある外観から類推されるようなハードさはまったくなく、タイヤが路面とコンタクトをとる最初のアタリのマイルドさ、そこから先、サスペンションがストロークする場面でのしなやかさは上質、かつ上品でさえある。
硬軟自在の動力性能、没入感たっぷりのBOOSTモード

もちろん動力性能も硬軟自在に楽しめる。ちなみに最高出力は70kW(95ps)、最大トルクは162N・m(16.6kgf・m)で、最高出力がN-ONE e:の47kW(64ps)から大幅に増大しているのが特徴だ。走行モードはECON/CITY/NOMAL/SPORTとBOOSTの全5モードがあり、それぞれ特性に違いをもたせ、走らせ方が選べるようになっている。ECONはホンダ車ではおなじみのエアコンの効かせ方を抑えるなどするモード。そしてCITYとNOMALは通常走行モードだが、シングルペダルでブレーキは停止までが可能なのがCITY。さらにパドルによる減速操作はECON、NOMAL(以上6段)、 CITY(4段)で可能だ。

一方でSPORTはASC(アクティブ・サウンド・コントロール)、仮想有段シフトが入り、一段と活気のある走りが体感できる。効果音のエンジンサウンドはホンダ車らしい胸のすく音質で、ボリュームも大袈裟すぎないところがいい。さらにその上を行くのがBOOSTモードで、70kWまで使って走らせることができるのがこのモード。

一般公道上の試乗だったので、その感触のサワリをほんの少し確認するに留めたが、今どきの表現を使うとまさに没入感たっぷりのモードで、走らせている際の手応えはなかなかのものだと思った。N-ONE e:でも、その気になって加速させると周囲のクルマのドライバーの目を点にさせるレベルだが、このSuper-ONEはその上をいくスケール感を持っている。
ワオ!の血は受け継がれながらも、洗練具合は比べ物にならない

いずれにしても感心したのは、ハイパワーを発揮させた状態でも足回りはシッカリと安定感を保ち、まったく危なげなくドライブが楽しめるということ。その昔、シティ・ターボやターボIIブルドッグの時代は、意を決した加速を試すとトルクステアに見舞われるほどのジャジャ馬ぶりを披露し、ワオ!と思わせられた。が、時代が変わってこのSuper-ONEでは、ワオ!の血は受け継がれながらも、音も振動も乗り味もパワー感も比べ物にならないくらい洗練されたレベルに昇華されていることは乗ると実感する。
便利なコンパクトカー、装備面の満足度も高い

他方で実用面でいうとSuper-ONEだからと疎かにされている訳ではまったくない。ステアリングヒーター、前2席シートヒーターやGoogle搭載9インチディスプレイやBOSEのサウンドシステムも標準装備される。ドライバーの眼前の7インチTFT液晶モニターも表示は高精細だし、こうした装備面の奢られぶりへの満足度は高い。

またN-ONE由来のハネ上げ式の後席は、低い床面を活用でき(我が家の場合はそこに自前のボアマットを敷き、シュンを乗せてみた)、この点では便利なコンパクトカーとしての威力もいかんなく発揮してくれる。
昨今の人気車のご多分に洩れず、バックオーダー問題とは無関係ではないようだが、事前に想像していたよりも遥かにチャーミングなクルマだった。
(写真:島﨑七生人)
※記事の内容は2026年7月時点の情報で制作しています。
▼ 毎月定額ラクラク支払い ▼