2026年4月9日に発表されたSUBARU「トレイルシーカー」(539万〜638万円)。ソルテラをベースに全長を延ばし、広い荷室や高い実用性を備えたミッドサイズSUVのBEVです。ラギッドなスタイルに、最長734kmの一充電走行距離を実現したトレイルシーカーは、アウトバックのようなグランドツアラーとしての魅力も備えているのでしょうか?自動車評論家の島﨑七生人さんの試乗レポートをお届けします。
*国のCEV補助金として129万円が交付されます。地方自治体の補助金が適用される場合もあります。2026年9月時点の情報です。
今どき貴重な紙のカタログには

トレイルシーカーには他のSUBARU車と同様、今どき貴重な紙のカタログが用意されている。表紙がビニールコートされた横長の体裁で、全28ページと、ひと頃の本カタログよりやや薄手ではあるものの、リアルな“紙”だけに、手にすると、新型車のカタログを開く時のあの心弾む気持ちを味わわせてくれ、オーナー心がくすぐられるといえばいいか。

そのカタログのページを捲っていくと、バックドアを開けてそこにオーナーと薄黄色の大型犬、グレート・ピレニーズが寄り添うシーンが大写しの全面1ページであった。「ん? 確かクラウン・エステートのカタログでも、同じような構図のカットがあったはず」と思い出したので、クラウンの時と同じように“カタログ写真を真似たほぼ同じカット”を撮ってみた。キャストはいつものように(!)飼い犬のシュンと家内という我が家総出演。僕は試乗車を借り出すと必ず自分で写真も撮っているのだが、外観7:3、インパネ、ADASスイッチのアップなど自動車雑誌的な基本のカットに加え、実際の生活スタイルがイメージしやすいように……と、クルマとともにしばしばこういうカットも撮っておくようにしている。
ラギッドな雰囲気はアウトバックの後継車だからか

トレイルシーカーが事実上の兄弟車のトヨタbZ4Xツーリングと前後して登場したのは今年4月のことだった。トレイルシーカーのベース車は同じBEVのソルテラであり、較べてみると全長がソルテラより155mm長いほかは、2850mmのホイールベース、全幅(1860mm)、前後トレッド(前:1600mm/後:1610mm)とサイズは共通で、全高のみルーフレールのあるトレイルシーカーのほうが25mm高い1675mm。設定タイヤサイズは235/60R18と235/50R20の2パターンがあるが全高は変わらず、210mmの最低地上高も全車で共通だ。

実車はルーフレールを始め、サイドシル、前後バンパー下部の装着パーツによりラギッドな雰囲気が演出されている。シュッとしたソルテラとの趣の違いは案外と大きい。さらにリア部分が延長されたことで、見るからにユーティリティを広げたクルマであることもわかる。ごく個人的には前述の装着パーツのつかないサッパリとした外観のクルマも見てみたい気もするが、アウトバックの後継車と考えれば妥当なところか。なおソルテラではボディ色のフェンダーアーチモールが登場しているが、トレイルシーカーでは黒の樹脂色のみの設定。これも古くはアウディ・オールロードクワトロあたりからのしきたりだ。
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安心感のある後席スペース、たっぷりとしたラゲッジ


一方でインテリアは基本的にソルテラをベースとしながら専用化している。装備類の充実ぶりは満足度が高く、64色から好きな色が選べるというマルチカラーアンビエント照明は、自分のクルマになって思い出した時に切り替えるものとして、ステアリングヒーターを始め、前2席はシートヒーターとベンチレーション、後ろ左右席にもシートヒーターが奢られる心優しさはかなり魅力的だ。


上下を潰した形状のステアリングホイールは操作時に“カド”の部分が掌に来るたびに慣れるまでにわずかな違和感が残るが、ダイヤル式のシフト切り替えは、これはこれでボタン式などより直感的に操作ができ、やりやすい。




後席スペースについては、家族や友人、知人を乗せることを前提にすれば安心感がある。とくに着座状態での頭上空間を始めとした余裕の広さ、ほぼフラットな床、それと乗降時の足さばきが楽な広い開口部などがいい。ラゲッジスペースも理屈抜きでドッサリと荷物が積み込める容量だし(実測してみると床面の奥行きは1080mmほど、幅は980mmほどだった)、AC100Vが使えるコンセントも用意される。
さまざまな事象がまったくコチラの神経を逆撫でしてこない

もちろん走りは、このクルマの注目点。試乗車はラインアップのトップモデルのET-HS(AWD)で、167kW/268N・mのモーターを前後に搭載、総電圧391Vのリチウムイオンバッテリーにより、標準装着の235/60R18 103Hタイヤで一充電走行距離690kmのスペックをもつ。そして実際に試乗してみて実感したのが、スペックどおりのゆとりが味わえるBEVであるということだった。


イメージとしても遠くにアウトバックを思い浮かべながら走らせていると、あのクルマの懐の深い走りっぷり、世界観がこのトレイルシーカーにも受け継がれ、再現されているとは感じられるところ。それにBEVならではのノイズレスのマナーがプラスされ、さらに心地よく上質なドライバビリティとなって実現されている。とりわけ街の雑踏の中を走らせていると、さまざまな事象がまったくコチラの神経を逆撫でしてこないところがいい。パワーマネージメントも非常に自然で、アクセルワークについてもコチラの意に反する反応を見せてこない。
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グランドツーリングのパートナーとしても適任

今回の試乗は都内近郊中心で、足を伸ばすような乗り方はしなかった。けれどこのクルマであればグランドツーリングのパートナーとしても適任なのではないだろうか。目安だが、バッテリー残量100%から60%のところまで使って、走行可能距離の数字は573kmから358kmを残すとの表示。BEVとしてはかなり気持ちの余裕を持って乗っていられる部類に入る……というのが実車に触れてみての素直に思えた感想だった。
(写真:島﨑七生人)
※記事の内容は2026年8月時点の情報で制作しています。
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