ホンダのSUVラインナップのベーシックラインを支えるWR-V、そしてスタイリッシュな内外装で人気のヴェゼル。この2台、実はボディサイズはほぼ同じながら価格は100万円以上異なります。果たしてその価格差に見合う価値がヴェゼルにあるのか、はたまたWR-Vがバーゲンプライスなのか? 2025年10月に追加されたヴェゼルの新グレード「RS(215万7100円〜250万300円)」とWR-Vのベースグレード「X」を自動車評論家の島﨑七生人さんと“自動車評論家犬”のシュンくんが乗り比べました。
史上初の“RS+4WD”は立体駐車場に収まる(ヴェゼルRS)

広報車(試乗車)の発着場所から筆者の自宅までは、グー○ルマップで道のりを引くと、一般道を使って39.6km。だが試乗を開始して自宅に着く頃には、『ヴェゼル』の良さが、改めて、十分に、理解できた。

試乗車は昨年10月に設定された新グレードのe:HEV RS。“URBAN SPORT VEZEL”をグランドコンセプトとし、デザインと走りを磨き、スポーティさを追求した……というモデルだ。価格は2WD(FF)が374万8800円、4WDが396万8800円で、本体だけならなんとか300万円台に収まる。

ポイントは外観に専用デザインが施され、もともとのNeatな雰囲気とは趣を異にする個性的なフロントグリル、下まわりのガーニッシュ類などを装着。あわせて専用ローダウンサスペンションを装着し、全高を1545mmに抑えている。この数値はカタログ諸元表をあたってみると、同じ18インチタイヤ装着のe:HEV Z・4WDに対して最低地上高で−15mm、全高については、プリントアンテナの採用もあり45mm低められたというもの。

ちなみにRSは先代ヴェゼル時代にも設定(2016年2月登場)されたが“ヴェゼルRSの4WD”は今回が初だ。
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とにかく予想外に乗り心地がいい!(ヴェゼルRS)

で、実際の走りは?というと、とにかくいいと思えたのが乗り心地だった。“ローダウン”“スポーツサスペンション”と資料にあった説明を目にし、さぞやストロークが減じられ締め上げられたセッティングか……と予想したのだが、実際はさにあらず。

発進からフロントが煽られず、リアの突き上げもほとんどないフラットでスムースな乗り味が実現されており、締め上げたというより、サスペンション系の無駄な動きが排除されスッキリとしている……そう感じられる乗り心地になっている。

ステアリングもセンターの座りがよく、操舵感もパワーアシストが過剰すぎず適度な手応えが実感できるもの。FWD車に対して車重は+80kgだが、これもボディの揺れを抑え込むのに貢献していて、この重厚とさえ言える乗り味に、後席に乗車中のシュン(乗り心地・NVH評価担当の当方の柴犬・♂・間もなく4歳、体重15kg)も終始納得した表情でいたほど(!)だった。
ミドルクラスセダン並みの快適性(ヴェゼルRS)

もちろん“人”に対しても快適なクルマだ。後席の広さ、視界の明るさなど快適性の高さはミドルクラスセダン並みで、リアベンチレーションも備わる。一方で前席にはシートヒーター(左右とも)を装備し、ステアリングヒーター付きという手厚さだ。


実用面では、後席座面をハネ上げることができ、後席部分のスペースに背の高い荷物を載せることができるほか、ハンズフリーアクセスが可能なパワーテールゲートが備わるのも嬉しいところ(夜間や静かな場所で手で力任せに閉めてバタン!と音を立てずに済む)。
ヴェゼル史上最上級の走りっぷり(ヴェゼルRS)

運転もしやすい。パワートレインのe:HEVはEV/ハイブリッド/エンジンの各モードを適宜使い分けながら、場面を問わずあくまでも自然なマナーとスムースな走りを提供してくれる。現行ヴェゼルには、登場以来、折々で試乗してきた。その中でも今回の試乗では、初期モデルよりも静粛性が高まり、より洗練された走りをモノにしているのを実感した。RS(4WD)は、ヴェゼル史上最上級の走りっぷりだと思えた。
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200万円台前半に収まるベースグレード(WR-V)

もう1台、ヴェゼルRSと前後して同じSUVのWR-Vにも試乗してみた。貸し出されたのはベースグレードの「X」で、2025年7月版のカタログ(と最新のホームページ記載のメーカー希望小売価格)は214万9400円。試乗車はドライブレコーダー、8インチディスプレーオーディオほかのディーラーオプションを装備した状態で、車載のスペックシートに記載の“広報車の価格”は234万9600円となっていた。
実はヴェゼルと大差ないボディサイズ(WR-V)

このWR-Vだが、ホンダのSUVの中ではもっとも手頃な価格設定=もっともコンパクトなSUVのイメージが強い。ところが実際のボディサイズは全長×全幅×全高=4325×1790×1650mmと、ヴェゼルe:HEV X・FFと改めて較べてみると、全長は25mm短いだけで、全幅は同数値、全高に至っては実は70mmも高い。ホイールベースもWR-Vのほうが40mm長い2650mmの設定になっている。昨今、ヒエラルキーがボディサイズに因らない例は少なくないが、ヴェゼルとWR-Vも、ヴェゼルがe:HEVや4WDを用意するのに対して、こちらのWR-VはFFのみ、パワートレインも4気筒・1.5Lのガソリンエンジン1機種で価格も抑えた設定……と、それぞれのコンセプトの違いが明確なのが特徴だ。

また情報としては昨年3月になるが、一部改良を実施。この時にZ、Z+のインパネ下部やリアドアへのソフトパッドの追加や、Z+には内装に上質感のあるブラウンのフルプライムスムースシートを採用。さらにオブジタンブルー・パールの新外装色を設定するなどしている。
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上級仕様から何かを外したような淋しさはない(WR-V)

実車はゴールドブラウン・メタリック(消費税込み3万8500円の有料色)の渋めのボディ色ということもあり、なかなかスノッブな雰囲気の外観。16インチのスチールホイール+フルホイールキャップや、非シルバー塗装のルーフレールガーニッシュ&ドアロアーガーニッシュを始め、非塗装のフロントグリル、さらにLEDフォグランプ、シルバードアモール非装着……といった出で立ち。要するに素のWR-Vといったところだが、他グレードとは並べて見較べれば違いがわかるといった程度。もともと機能本位のキャラクターであるだけに、上級仕様から何かを外したような淋しさは感じない。
インテリアは実用車然としている(WR-V)

インテリアも同様で、室内はブラックが基調のシンプルでサッパリしたもの。他グレードのようなインパネ、ドアライニング、ドアアームレスト部のソフトパッドや本革巻きステアリングホイールも省かれる。


このあたりは常に手で触れている部分だけに、さすがに上級車に馴染んだオーナーには、実用車と頭では理解しつつも若干気になるところかもしれない。
素朴な乗り味、穏やかなステアリングフィール(WR-V)

一方で走らせてみると、WR-Vの“普通でベーシックな個性”を実感する。運転席から見えるフードは高めで、それは走らせながらズシッとしたノーズの分厚さを感じさせ、それはコンパクトな部類ながらSUVらしい安心感に繋がっている。

17インチに対して16インチタイヤの試乗車は乗り味は素朴な印象でステアリングフィールも穏やかな手応え。けれどスピードを乗せて行くと乗り心地がフラットになっていくあたりは、グローバル市場を意識したクルマらしいところで、要は実直にクルマとしてしっかりとした基本性能を実現させた風。
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クルマとしての振るまいが自然(WR-V)

パワートレインも通常は必要にして十分な性能を発揮してくれ、パドルシフトが使えるほか、ATのSモードを使えばメリハリのある加速が得られる。

走行中の車内は際立って静かという訳ではないが、クルマとしての振るまいが自然だから、乗車中のシュンもリラックスして窓の外の景色を眺めていたほどだった。
快適性のヴェゼル、使い勝手のWR-V

ヴェゼルとWR-Vは、どちらも持て余さないサイズのホンダのSUV同士。だが両車のコンセプトの違いは明快で、ヴェゼルは(今回のRSはとくに)快適性のプライオリティが高い、乗用車ライクなドライバビリティを求めるユーザーも納得できる実力をもっている。

他方でWR-Vは十分な後席スペース、使い勝手のよさが際立ち、日常から休日のレジャーまで無条件で使いこなせるところが魅力だと思う。
(写真:島﨑七生人)
※記事の内容は2026年4月時点の情報で制作しています。
※2年前にWR-Vが登場した時のヴェゼルとの比較試乗記は以下を参照
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